猫に打つ注射の種類と費用2026年版|ワクチン・ステロイド・マイクロチップの違いを解説

動物病院で「今日はワクチンを打ちますね」「炎症を抑える注射をしましょう」と言われても、その注射が何のためのもので、費用はいくらかかるのか、いまひとつ分からないまま会計を済ませた経験はありませんか。猫が受ける注射にはワクチンをはじめ、ステロイド、抗生物質、そしてマイクロチップの装着まで、目的も費用もまったく異なる種類があります。この記事では、猫に打つ主な注射の種類と2026年時点の費用の目安、それぞれの役割の違いを、多頭飼い・室内飼いの飼い主さん目線で整理してお伝えします。
猫の注射は大きく分けて4種類ある
ひとくちに「注射」といっても、猫が動物病院で受けるものは目的によって性質が大きく異なります。まずは全体像を把握しておくと、獣医師の説明が理解しやすくなります。
予防目的の注射(ワクチン)
感染症に備えて、あらかじめ免疫の準備をしておくための注射です。猫でもっとも身近なのが混合ワクチンと狂犬病ワクチン(猫は任意)で、多くの場合は年に一度、健康な状態のときに接種します。病気の治療ではなく、あくまで健康維持をサポートする位置づけの注射です。
治療・症状ケア目的の注射
ステロイド剤や抗生物質、鎮痛剤など、体調を崩したときに投与される注射です。皮膚炎やアレルギー、感染症、痛みのある状態など、症状に応じて種類が選ばれます。飲み薬が難しい猫や、早く成分を行き渡らせたい場面で選択されることがあります。
栄養・体液補給目的の注射(点滴・皮下補液)
脱水や食欲不振のとき、水分やミネラルを補うために行う皮下補液・点滴です。慢性腎臓病のシニア猫では、自宅で皮下補液を続けるケースもあります。厳密には「注射」というより輸液ですが、針を使う処置として同じ枠で語られることが多いものです。
個体識別目的の装着(マイクロチップ)
専用の注入器で、直径約2ミリ・長さ約12ミリのマイクロチップを首の後ろあたりの皮下に埋め込みます。2022年6月以降、ブリーダーやペットショップで販売される犬猫にはマイクロチップの装着が義務化されました。すでに飼っている猫への装着は努力義務です。
補足・参考
費用は動物病院や地域、猫の体格・状態によって幅があります。本記事の金額はあくまで2026年時点の一般的な目安であり、実際の料金は必ずかかりつけの病院にご確認ください。
猫のワクチンの種類と選び方3つのポイント
室内飼いか外に出る機会があるか、多頭飼いかどうかで、選ぶべきワクチンの種類は変わってきます。ここでは代表的な混合ワクチンを整理します。
ポイント1|3種混合ワクチン(コアワクチン)
すべての猫に接種が推奨される「コアワクチン」に相当するのが3種混合です。カバーするのは以下の3つの感染症です。
・猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス)
・猫カリシウイルス感染症
・猫汎白血球減少症(猫パルボ)
いわゆる「猫風邪」の原因ウイルスと、致死率の高いパルボをカバーします。完全室内飼いの猫でも、飼い主が外から持ち込むウイルスに備えて3種は接種が勧められるのが一般的です。
ポイント2|5種・7種混合ワクチン
3種に加えて猫白血病ウイルス感染症(FeLV)などをカバーするのが5種、さらにクラミジアなどを加えたものが7種です。外に出る猫や、他の猫と接触する機会がある多頭飼いの家庭では、より広くカバーするタイプが検討されます。
ポイント3|ライフスタイルで種類を決める
むやみに種類の多いワクチンを打てばよいわけではありません。接種後の負担や、まれに接種部位にしこりが生じるリスクもあるため、猫の生活環境に合わせて必要なものを選ぶのが基本です。
| 種類 | カバーする主な感染症 | 向いている猫 | 費用目安(1回) |
|---|---|---|---|
| 3種混合 | 鼻気管炎・カリシ・汎白血球減少症 | 完全室内飼いの猫 | 3,000〜5,000円 |
| 5種混合 | 3種+白血病+カリシ追加株など | 外出あり・多頭飼い | 5,000〜7,500円 |
| 7種混合 | 5種+クラミジアなど | 接触機会が多い猫 | 7,000〜10,000円 |
編集部の一言
初診の場合は診察料が別途500〜1,500円ほど加算されることが多いです。多頭飼いの家庭では、頭数分をまとめて予約すると通院回数を減らせて、猫のストレスも抑えられます。同居猫の1匹が体調を崩している日は、他の子の接種も延期するのが無難です。
ステロイド注射の役割と気をつけたい2つのこと
皮膚炎やアレルギー、喘息、口内炎など、炎症をともなう症状で処方されることが多いのがステロイド剤です。飼い主さんからの質問が多い注射のひとつでもあります。
ステロイド注射が使われる場面
ステロイドは体内の過剰な炎症反応を抑える働きを持つ薬です。かゆみの強い皮膚トラブルや、食欲が落ちるほどの口内炎、アレルギー反応などで、獣医師の判断のもと使われます。飲み薬を嫌がる猫や、素早く成分を届けたい場面で注射が選ばれることがあります。
注意点1|長期・頻回の使用は慎重に
ステロイドは症状の不快感を和らげる助けになる一方、長期にわたって頻繁に使うと、糖尿病リスクや免疫の低下など体への負担が指摘されています。持続性の高い注射を安易に繰り返すのではなく、根本にある原因の把握とあわせて使うことが大切です。
注意
ステロイドは自己判断で「またあの注射を打ってほしい」と要望するものではありません。使用の可否・頻度は必ず獣医師が猫の状態を診たうえで判断します。効果が高いと感じても、繰り返しの投与にはリスクがともなうことを理解しておきましょう。
注意点2|費用は症状と薬剤で変わる
ステロイド注射そのものの薬剤費は1回あたりおおむね1,000〜3,000円程度ですが、診察料・検査料・他の処置が加わると総額はさらに上がります。以下は治療系注射の費用イメージです。
| 注射の種類 | 主な目的 | 費用目安(薬剤のみ) |
|---|---|---|
| ステロイド注射 | 炎症・かゆみのケア | 1,000〜3,000円 |
| 抗生物質注射 | 細菌感染への対応 | 1,000〜2,500円 |
| 鎮痛・消炎注射 | 痛みのケア | 1,500〜3,000円 |
| 制吐・止血注射 | 嘔吐・出血への対応 | 1,000〜2,500円 |
マイクロチップ装着の費用と手続き

迷子や災害時の身元確認に役立つマイクロチップは、注射器に似た専用の器具で装着します。針は太めですが、処置自体は数秒で終わります。
装着費用と登録手数料
マイクロチップの装着費用は動物病院で3,000〜6,000円ほどが一般的です。これに加えて、環境省のデータベースへの登録手数料が必要になります。オンライン登録は300円、紙申請は1,000円が2026年時点の目安です。
装着後に必要な手続き
装着しただけでは意味がなく、飼い主情報を環境省の「犬と猫のマイクロチップ情報登録」システムに登録して初めて機能します。引っ越しや飼い主の変更があった場合は、登録情報の変更も忘れずに行いましょう。多頭飼いの場合は、猫ごとに個別のチップ番号が割り振られます。
補足・参考
自治体によっては、マイクロチップ装着費用の一部を助成している場合があります。お住まいの市区町村の動物愛護・生活衛生の窓口や公式サイトで、助成制度の有無を確認してみると費用負担を抑えられることがあります。
年齢別に見る注射の考え方(子猫・成猫・シニア)
同じ注射でも、猫のライフステージによって重視するポイントが変わります。年齢別に整理しておきましょう。
子猫期(生後2〜4か月)
母猫からもらった免疫が切れる時期に合わせ、初年度は複数回に分けてワクチンを接種するのが一般的です。生後2か月ごろに1回目、その3〜4週間後に2回目、というスケジュールが目安になります。マイクロチップの装着も、この時期に検討する家庭が増えています。
成猫期(1〜7歳)
健康状態が安定していれば、年1回のワクチンが基本のリズムになります。近年は「毎年ではなく数年に一度でよいのでは」という議論もあり、抗体価検査で必要性を確認してから接種を判断する方法もあります。かかりつけ医と相談しながら決めるとよいでしょう。
シニア期(7歳以上)
高齢になると、慢性腎臓病などで皮下補液を受ける機会が増えてきます。ワクチンについても、体調や持病を考慮したうえで接種の可否を慎重に判断します。シニア期は「打つべきか打たざるべきか」を体の状態から見極める視点が大切になります。
| ライフステージ | 中心となる注射 | 頻度の目安 |
|---|---|---|
| 子猫期 | 混合ワクチン(初年度複数回) | 3〜4週間おきに2〜3回 |
| 成猫期 | 混合ワクチン(追加接種) | 年1回または抗体価で判断 |
| シニア期 | ワクチン+皮下補液など | 体調に応じ個別判断 |
注射後に気をつけたい5つのサイン
ワクチンや治療の注射のあとは、猫の様子をいつもより注意深く観察しましょう。多くはすぐに落ち着きますが、まれに体調の変化が現れることがあります。
サイン1|接種部位のしこり・腫れ
注射した部位が一時的に少し腫れることがあります。数日で引くことが多いものの、しこりが長期間残る・大きくなる場合は診察を受けましょう。
サイン2|元気・食欲の低下
接種当日は少しだるそうにする猫もいます。翌日になっても食欲が戻らない、ぐったりしているといった場合は、無理をさせず病院に連絡します。
サイン3|嘔吐・下痢
接種後に嘔吐や下痢が続くときは、体が反応している可能性があります。回数や様子をメモしておくと、獣医師への説明がスムーズです。
サイン4|顔の腫れ・かゆがる仕草
顔まわりが腫れる、しきりに掻くといった様子はアレルギー反応の可能性があります。接種後30分〜数時間はとくに注意して見守ると安心です。
サイン5|呼吸が荒い・ぐったりする
ごくまれに、接種後すぐに強いアレルギー反応が起きることがあります。呼吸が苦しそう、ぐったりして反応が鈍いなどの様子があれば、すぐに動物病院へ連絡してください。
注意
重いアレルギー反応(アナフィラキシー)は接種直後に起きやすいため、可能であれば午前中〜昼過ぎに接種し、その日は外出を控えて猫の様子を見守れる時間帯を選ぶと安心です。
ペット保険は注射に使えるのか

注射の費用は積み重なると意外と大きな負担になります。ここで気になるのがペット保険の適用範囲です。
ワクチン・マイクロチップは対象外が基本
予防目的のワクチンや、健康なうちに行うマイクロチップ装着は、原則としてペット保険の補償対象外です。これらは病気やケガの治療ではないためです。予防関連の費用は自己負担が前提と考えておきましょう。
治療目的の注射は対象になることが多い
一方で、病気やケガの治療として行われるステロイド注射・抗生物質注射・点滴などは、多くのペット保険で補償対象になります。加入しているプランの補償割合(50%・70%など)に応じて自己負担が軽くなります。
| 注射の種類 | 目的 | 保険適用の傾向 |
|---|---|---|
| 混合ワクチン | 予防 | 原則対象外 |
| マイクロチップ | 個体識別 | 原則対象外 |
| ステロイド注射 | 治療 | 対象になることが多い |
| 抗生物質・点滴 | 治療 | 対象になることが多い |
ただし補償の範囲は保険会社やプランごとに細かく異なります。加入前・使用前には、必ず約款や公式情報で対象範囲を確認しておきましょう。
症状別に見る注射との向き合い方
猫の状態によって、注射の役割や飼い主が意識したいポイントは変わります。代表的なケースを整理します。
皮膚炎・アレルギーの場合
かゆみや炎症が強いときにステロイド注射が使われることがありますが、繰り返す背景にはフードや環境が関係している場合もあります。注射で不快感を和らげつつ、原因の見直しを並行して行う姿勢が大切です。
慢性腎臓病の場合
シニア猫に多い慢性腎臓病では、脱水を補うための皮下補液が中心になります。自宅での補液を指導される場合もあり、猫の体調を維持するためのケアとして継続的に関わることになります。
感染症・発熱の場合
細菌感染が疑われる場合は抗生物質の注射が選ばれることがあります。飲み薬が難しい猫でも成分を届けやすい利点があります。獣医師の指示どおりの通院間隔を守ることが回復への近道です。
よくある質問
- 完全室内飼いの猫にもワクチンは必要ですか?
- 外に出ない猫でも、飼い主が衣服や靴でウイルスを持ち込む可能性があるため、3種混合ワクチンの接種が一般的に勧められています。ただし接種の要否や頻度は猫の状態によって異なるため、かかりつけの獣医師と相談して判断するのが安心です。
- ワクチンは毎年打たないといけませんか?
- 従来は年1回が主流でしたが、近年は抗体価検査で免疫の残り具合を確認し、必要なときだけ接種するという考え方も広がっています。どちらが適しているかは猫の年齢や生活環境で変わるため、獣医師と相談して決めるとよいでしょう。
- ステロイド注射は体に悪いのでしょうか?
- 適切に使えば炎症の不快感を和らげる助けになりますが、長期・頻回の使用には糖尿病リスクや免疫低下などの負担が指摘されています。獣医師の管理のもとで、必要な範囲で使うことが前提です。飼い主の判断で繰り返しを求めるものではありません。
- マイクロチップの装着は痛くないですか?
- 通常の注射より針は太めですが、処置自体は数秒で終わります。多くの猫は一瞬痛がる程度で済みます。避妊・去勢手術の麻酔中にあわせて装着してもらう方法もあり、その場合は猫の負担をより抑えられます。
- 注射の後、当日はお風呂やシャンプーをしても大丈夫ですか?
- ワクチン接種当日は体に負担がかかっている可能性があるため、シャンプーや激しい遊びは控え、安静に過ごさせるのが無難です。翌日以降、猫の様子が普段どおりであれば通常の生活に戻して問題ないことが多いですが、心配なら病院に確認しましょう。
- 多頭飼いの場合、注射の費用はまとめて割引になりますか?
- 病院によっては多頭割引や、同日接種で診察料をまとめてくれる場合があります。制度は病院ごとに異なるため、予約時に確認するとよいでしょう。頭数が多い家庭では、通院回数を減らすことで猫のストレス軽減にもつながります。
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まとめ|注射の種類と目的を知って落ち着いて向き合う
猫が受ける注射は、予防のためのワクチン、治療のためのステロイドや抗生物質、体液を補う点滴、個体識別のためのマイクロチップと、目的も費用も大きく異なります。それぞれの役割を理解しておくと、動物病院での説明が腑に落ちやすくなり、費用の見通しも立てやすくなります。
この記事のまとめ
・注射は予防・治療・補液・個体識別の4系統に分かれる
・混合ワクチンは室内飼いでも3種が基本、生活環境で種類を選ぶ
・ステロイドは有用だが長期・頻回の使用は獣医師の管理が前提
・ワクチン・マイクロチップは保険対象外、治療の注射は対象が多い
・接種後は体調の変化を数時間〜数日、注意深く見守る
費用の金額はあくまで目安であり、猫の状態や病院によって変わります。何より大切なのは、注射の目的をかかりつけの獣医師と共有し、その子にとって本当に必要なケアを一緒に選んでいくことです。愛猫の様子をよく観察し、気になる変化があれば早めに相談する姿勢を、ねこまめ編集部としても大切にしていただければと思います。



