猫のFIPとは?2026年版|猫伝染性腹膜炎の基礎知識・原因・発症リスクをわかりやすく解説

「猫のFIP」という言葉を、動物病院やSNSで見かけて不安になった方も多いのではないでしょうか。FIP(猫伝染性腹膜炎)は、猫の飼い主さんの間で最も恐れられている病気のひとつです。ただ、名前は知っていても「なぜ発症するのか」「うちの子は大丈夫なのか」まで正確に理解している方は多くありません。
この記事では、ねこまめ編集部が2026年時点の情報をもとに、FIPの基礎知識・原因となる猫コロナウイルスとの関係・発症リスクが高まる条件・タイプ別の特徴・多頭飼いでの注意点までを、飼い主さん目線でわかりやすく整理しました。過度に不安をあおるのではなく、正しく知って落ち着いて備えるための内容です。
猫のFIPとは?まず押さえたい3つの基本
FIPは「Feline Infectious Peritonitis」の頭文字を取ったもので、日本語では猫伝染性腹膜炎と呼ばれます。名前に「伝染性」とついているため、猫から猫へFIPそのものがうつると誤解されがちですが、実態は少し異なります。
1. FIPは「猫コロナウイルスの変異」によって起こる
FIPの根本にあるのは、猫コロナウイルス(FCoV)というごくありふれたウイルスです。このウイルス自体は多くの猫が保有しており、通常は腸管に留まって軽い下痢を起こす程度、あるいは無症状で経過します。
問題になるのは、猫の体内でこのウイルスが変異し、免疫細胞(マクロファージ)に感染する性質を獲得した場合です。変異したウイルスが全身をめぐり、血管に炎症を起こすことでFIPという状態に至ります。
・猫コロナウイルス保有 = FIPではない
・変異が起きた一部の個体でのみ発症する
・変異したウイルスは基本的に猫から猫へ直接うつらないと考えられている
2. 発症率は保有猫のうちごく一部
多頭飼育環境では猫コロナウイルスの保有率が非常に高くなりますが、そのうちFIPを発症するのは一般に数%程度とされています。つまり「ウイルスを持っている=いずれ発症する」という関係ではありません。
ただし、若齢猫や保護施設・繁殖施設出身の猫、多頭飼育でストレスの多い環境の猫では発症割合が上がる傾向が指摘されています。この「条件が重なると確率が上がる」という点が、FIPを理解するうえでの重要なポイントです。
3. かつては極めて厳しい病気とされてきた
FIPは長らく「診断された時点で余命が非常に限られる」病気とされてきました。近年は治療選択肢に関する研究や報告が進み、状況は以前と変わりつつありますが、早期に気づいて動物病院で相談することの重要性は変わりません。
補足・参考
本記事は一般的な情報整理を目的としたもので、診断や治療方針を示すものではありません。実際の判断は必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
FIPの原因となる猫コロナウイルスの4つの特徴
FIPを理解するには、その土台となる猫コロナウイルス(FCoV)の性質を知っておく必要があります。ここでは押さえておきたい4つの特徴を整理します。
1. 便を介して広がる
猫コロナウイルスは主に糞便中に排出され、トイレ砂を共有することで他の猫に伝播します。多頭飼いでトイレを共用している場合、同居猫全体に広がっていることは珍しくありません。グルーミングの際に肉球や被毛についた微量の便を舐め取ることでも取り込まれます。
2. 多くの猫が一度は接触している
保護施設やキャッテリー、多頭飼育環境で育った猫では、猫コロナウイルスの抗体を持つ割合が非常に高いことが知られています。完全単独飼育で外にも出ない猫であれば保有率は下がりますが、「抗体が陽性=FIP」ではないことを繰り返し確認しておく必要があります。
3. 一過性の感染で終わる猫も多い
猫コロナウイルスに感染しても、多くの猫は数週間から数か月でウイルスを排出しなくなり、自然に体内から消えていきます。一方で、長期にわたって持続的に排出し続ける「持続排出個体」も一定数存在し、多頭飼育環境ではこの個体が同居猫への感染源となり続けます。
4. 変異のきっかけは完全には解明されていない
なぜ一部の猫でのみ変異が起こるのか、その全容はまだ研究途上です。現時点では、猫側の免疫状態・遺伝的背景・ストレス・ウイルス量など複数の要因が絡むと考えられています。
| 項目 | 猫コロナウイルス(FCoV) | FIP(変異後) |
|---|---|---|
| 主な感染部位 | 腸管の上皮細胞 | マクロファージ(免疫細胞) |
| 主な症状 | 無症状〜軽い下痢 | 発熱・腹水・胸水・神経症状など |
| 猫から猫への伝播 | 便を介して広がる | 直接の伝播は基本的にないとされる |
| 保有・発症の割合 | 多頭飼育では高率で保有 | 保有猫の数%程度 |
| 検査での判定 | 抗体価・PCRで検出 | 症状・画像・複数検査の総合判断 |
FIPの発症リスクが高まる5つの条件
FIPは「運が悪ければ誰にでも起こりうる」病気ですが、統計的にリスクが上がりやすい条件はある程度わかっています。ここでは代表的な5つを挙げます。
1. 若齢(生後数か月〜2歳前後)
FIPの発症は生後6か月から2歳ごろに集中する傾向があります。免疫システムがまだ発達途上であること、母猫由来の移行抗体が切れる時期にウイルスへ曝露しやすいことが背景にあると考えられています。
2. 多頭飼育・高密度環境
猫の頭数が多いほど、環境中の猫コロナウイルス量が増えます。ウイルスへの曝露量が多いほど変異のチャンスも増えるという考え方から、多頭飼育はFIPの代表的なリスク要因として挙げられます。
3. 強いストレスがかかる出来事
迎え入れ直後の環境変化、去勢・避妊手術、引っ越し、同居猫の追加、長期の入院やペットホテル利用など、猫にとって負担の大きい出来事の後に発症するケースが報告されています。ストレスが免疫バランスに影響し、ウイルスの動きを変えると推測されています。
4. 特定の血統・遺伝的背景
純血種、特にベンガル・ラグドール・アビシニアン・ブリティッシュショートヘアなど一部の猫種で発症報告がやや多いという指摘があります。ただし、これは飼育環境(キャッテリー由来で多頭環境にいた)との交絡もあるため、猫種だけで断定はできません。
5. 免疫が低下している状態
猫免疫不全ウイルス(FIV)や猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫、慢性疾患を抱える猫、高齢猫などでは、免疫のバランスが崩れやすくFIP発症のリスク因子となりうると考えられています。
| リスク条件 | 関連性の目安 | 飼い主ができる対応 |
|---|---|---|
| 生後6か月〜2歳 | 高い | この時期の体調変化を細かく観察 |
| 多頭飼育(5頭以上) | 高い | トイレ数と換気の見直し |
| 環境変化・手術後 | 中程度 | 変化を段階的にし、数週間は経過観察 |
| 純血種・特定血統 | 中程度 | 入手元の飼育環境を事前に確認 |
| FIV/FeLV陽性 | 中程度 | 定期的な健康診断でコンディション管理 |
| 完全単独飼育・室内飼い | 低い | 過度な心配は不要、通常の健康管理を |
編集部の一言
リスク条件を並べると不安になりますが、条件に当てはまる猫の大多数はFIPを発症しません。むしろ「知っているから小さな変化に早く気づける」ことの方が、飼い主さんにとって大きな価値になります。
FIPのタイプ別特徴|3つの病型を理解する
FIPは症状の出方によって、大きく3つのタイプに分けられます。実際には混在するケースも多く、経過中にタイプが変わることもあります。
1. ウェットタイプ(滲出型)
最も典型的とされるタイプで、血管の炎症により体腔内に液体が溜まります。お腹が張って膨らむ「腹水型」、呼吸が苦しくなる「胸水型」があります。進行が比較的速く、数日から数週間の単位で急速に状態が変わることがあります。
・痩せているのにお腹だけが膨らむ
・浅く速い呼吸、口を開けて呼吸する
・抗生剤に反応しない持続的な発熱
2. ドライタイプ(非滲出型)
体液の貯留がなく、臓器に肉芽腫(炎症のかたまり)ができるタイプです。腎臓・肝臓・リンパ節・眼・神経系などに病変が出るため、症状が多彩で診断が難しいとされます。進行はウェットタイプよりゆるやかなことが多い一方、初期の見極めが困難です。
・原因のはっきりしない体重減少と食欲低下
・黄疸、貧血
・触知できるしこり
3. 神経型・眼型
ドライタイプの一部として扱われることもありますが、中枢神経や眼に病変が集中するタイプです。ふらつき、けいれん、旋回運動、性格の変化、眼のにごりやぶどう膜炎などが現れます。神経症状は他の疾患との鑑別が必要なため、早めの受診が重要です。
| 病型 | 主なサイン | 進行の速さ | 気づきやすさ |
|---|---|---|---|
| ウェット(腹水) | 腹部膨満・体重減少・発熱 | 速い | 比較的気づきやすい |
| ウェット(胸水) | 呼吸が浅く速い・運動を嫌がる | 速い | 気づきやすいが急を要する |
| ドライ | 元気食欲低下・黄疸・しこり | ゆるやか | 気づきにくい |
| 神経型 | ふらつき・けいれん・旋回 | 中〜速い | 症状が出れば明確 |
| 眼型 | 眼のにごり・虹彩の色調変化 | ゆるやか | 見た目で気づける |
注意
呼吸が浅く速い、口を開けて呼吸している、といったサインは緊急性が高い状態です。様子を見ずに、その日のうちに動物病院へ連絡してください。
飼い主が気づける初期サイン5つ

FIPは特異的な初期症状に乏しく、「なんとなく調子が悪い」から始まることがほとんどです。ここでは、日常のなかで気づけるサインを5つ挙げます。
1. 抗生剤で下がらない発熱が続く
猫の平熱は38〜39度前後です。39.5度以上の発熱が数日以上続き、一般的な治療で下がらない場合、FIPを含む複数の可能性が検討対象になります。自宅で毎日測るのは難しいですが、耳や肉球がいつもより熱い、じっとして動かないといった変化は目安になります。
2. 食欲のムラと緩やかな体重減少
「食べる日と食べない日がある」「量は減っていないのに痩せてきた」というパターンは要注意です。月1回の体重測定を習慣化しておくと、変化に気づきやすくなります。成猫で1か月に体重の5%以上が減っていれば、一度受診を検討したいラインです。
3. 痩せているのにお腹だけ膨らむ
背骨や肋骨が触りやすくなっているのに、お腹だけが下方向に膨らんでいる場合は腹水の可能性があります。抱き上げたときに「重さの分布がいつもと違う」と感じたら、獣医師に伝えてみてください。
4. 目の変化
虹彩の色が部分的に変わる、瞳孔の形が左右で違う、眼の中に濁りが見える、といった変化は眼型のサインになることがあります。写真を撮っておくと、経過を伝えるときに役立ちます。
5. 遊ばなくなる・высок所に登らなくなる
誤字を含む表現を避けてお伝えすると、高い場所へのジャンプを避ける、遊びの誘いに乗らない、隠れて出てこない、といった行動変化は体調不良の初期サインです。特に若い猫で急に活動量が落ちた場合は見過ごさないようにしましょう。
診断の流れ|動物病院で行われる4つのステップ
FIPには「これ一つで確定できる」という単独の検査がありません。複数の情報を組み合わせて総合的に判断されるため、飼い主さんも流れを知っておくと落ち着いて対応できます。
1. 問診と身体検査
年齢、入手元、多頭飼育かどうか、最近の環境変化、症状の経過などを詳しく聞かれます。保護施設・ブリーダー出身か、同居猫は何頭かといった情報は診断の大きな手がかりになります。体温測定、腹部の触診、粘膜色の確認などが行われます。
2. 血液検査
総蛋白の上昇、アルブミン/グロブリン比(A/G比)の低下、貧血、白血球の変化、黄疸の指標などが確認されます。特にA/G比の低下は、FIPを疑う際によく参照される指標です。ただしこれらは他の炎症性疾患でも動くため、単独では確定になりません。
3. 画像検査と体液の検査
超音波検査やレントゲンで腹水・胸水の有無、臓器の状態を確認します。体液が採取できる場合は、その性状(黄色くやや粘稠、蛋白濃度が高い等)や細胞の内容が重要な情報になります。
4. 遺伝子検査・免疫染色
体液や組織中の猫コロナウイルス遺伝子をPCRで調べたり、マクロファージ内のウイルス抗原を免疫染色で確認したりする方法があります。専門的な外部検査機関へ依頼されることが多く、結果まで数日を要します。
| 検査 | わかること | 単独で確定できるか |
|---|---|---|
| 血液検査(A/G比等) | 炎症・蛋白バランスの傾向 | できない |
| コロナウイルス抗体価 | ウイルスに接触した履歴 | できない |
| 超音波・レントゲン | 体液貯留・臓器の変化 | できない |
| 体液の性状検査 | 滲出液の特徴 | できない(有力な材料) |
| 免疫染色・PCR | 病変部でのウイルス確認 | 確定に近づく |
補足・参考
「コロナウイルス抗体が陽性でした」と言われても、それだけでFIPと決まるわけではありません。健康な猫でも陽性になることは多く、数値の高低とFIPの発症は必ずしも一致しません。不安なときは、その結果をどう解釈しているかを獣医師に率直に質問してみてください。
環境別の注意点|3つのケースで考える
FIPへの向き合い方は、猫の飼育環境によって優先すべきポイントが変わります。ここでは代表的な3つのケースに分けて整理します。
単頭飼い・完全室内飼いの場合
猫コロナウイルスの持ち込み経路が限られるため、リスクは相対的に低い環境です。それでも子猫時代に保護施設やペットショップで曝露している可能性はあるため、迎え入れから2歳ごろまでは体調変化に注意を払いたい時期です。新しい猫を迎える予定がある場合は、後述の隔離期間を確保しましょう。
多頭飼い(2〜4頭)の場合
トイレの共用によりウイルスが循環しやすい環境です。トイレは「頭数+1個」を基本とし、こまめな砂の交換と定期的な容器の洗浄を心がけます。フードボウルや水飲み場も可能な範囲で分け、猫同士のストレスを減らす縦の空間(キャットタワー・棚)を用意すると、全体の緊張度が下がります。
多頭飼育(5頭以上)・保護活動の場合
ウイルス量が最も高くなりやすい環境です。可能であれば飼育スペースを区分けし、トイレの位置を分散させます。新入り猫は最低2週間、できれば3〜4週間の隔離期間を設け、その間に健康診断を済ませておくと安心です。換気と清掃の頻度を上げることが、環境中のウイルス量を下げる基本になります。
| 環境 | トイレ数の目安 | 新入り猫の隔離期間 | 健康チェック頻度 |
|---|---|---|---|
| 単頭・室内飼い | 1〜2個 | — | 月1回の体重測定+年1回の健診 |
| 2〜4頭 | 3〜5個 | 2週間 | 月1回の体重測定+年1〜2回の健診 |
| 5頭以上・保護活動 | 頭数+1個以上 | 3〜4週間 | 2週に1回の観察記録+年2回の健診 |
日常でできるコンディション管理4つ
FIPそのものを確実に防ぐ方法は現時点で確立されていません。ただし、猫全体の健康状態を良好に保つ取り組みは、体調変化への気づきやすさにもつながります。
1. 栄養バランスの整った総合栄養食を基本にする
AAFCOの栄養基準を満たす総合栄養食を主食に据え、年齢ステージに合ったものを選びます。動物性たんぱく質を主原料とし、必要な水分が摂れるようウェットフードを組み合わせるのも一つの方法です。極端な手作り食や偏った与え方は、栄養バランスを崩す原因になりかねません。
2. トイレ環境を清潔に保つ
猫コロナウイルスは糞便を介して広がるため、1日2回以上の排泄物除去と、月1回程度の容器の丸洗いを目安にします。トイレ砂の飛散が多い場合は、周囲の床の拭き掃除も合わせて行うと環境中のウイルス量を減らせます。
3. ストレス要因を減らす
新しい猫を迎える際は段階的に対面させる、来客や工事の際は静かな部屋を確保する、フードや砂の急な変更を避けるなど、猫にとっての「予測できない変化」を減らすことが基本です。隠れられる場所と高い場所の両方を用意しておくと、猫は自分で緊張を調整できます。
4. 定期的な健康診断と記録
年1回、シニア期や多頭飼育では年2回の健康診断を目安にします。あわせて、体重・食事量・排泄回数・活動量を簡単に記録しておくと、受診時に経過を正確に伝えられます。スマートフォンのメモやカレンダーで十分です。
編集部の一言
実際に多頭飼いのお宅を取材すると、体調変化に早く気づけている飼い主さんほど、「毎朝ごはんの前に全頭の顔を見る」といった小さな習慣を持っていることが多いと感じます。特別な道具は要りません。日々の観察が最大の備えです。
FIPをめぐる誤解5つを整理する

FIPは情報が錯綜しやすい分野です。ここでは、飼い主さんが混乱しやすい5つの誤解を整理しておきます。
1. 「FIPの猫と同居すると必ずうつる」は誤り
変異後のウイルスが猫から猫へ直接伝播することは基本的にないと考えられています。同居猫にうつるのは変異前の猫コロナウイルスであり、それを受け取った猫が必ずFIPになるわけではありません。FIPの猫を隔離しなければならない、という発想は必ずしも正確ではないのです。
2. 「抗体価が高い=FIP」は誤り
抗体価はあくまで「ウイルスに接触した履歴」を示すものです。健康な猫でも高値を示すことがあり、逆にFIPを発症していても抗体価が高くないケースもあります。数値単独での判断はできません。
3. 「人にうつる」は誤り
猫コロナウイルスは猫特有のウイルスで、人間に感染するものではありません。人の新型コロナウイルスとも別のウイルスです。この点は安心して差し支えありません。
4. 「ワクチンで確実に防げる」は誤り
日本では一般的にFIPワクチンは流通しておらず、海外で用いられているものについても有用性の評価が定まっていません。現時点で「ワクチンを打てば安心」とは言えない状況です。
5. 「診断=すぐに諦めるしかない」は現在では正確でない
かつては極めて厳しい経過をたどる病気とされてきましたが、近年は治療選択肢に関する研究や症例報告が積み重なりつつあります。選択肢や費用感については、かかりつけの獣医師と率直に相談することが何より重要です。
注意
SNSや個人ブログには、正規の流通経路を経ていない薬剤に関する情報も見られます。品質や成分が保証されないものは重大なリスクを伴います。判断は必ず獣医師を介して行ってください。
費用と備え|知っておきたい3つの視点
FIPは検査から治療まで、経済的な負担が大きくなりやすい病気です。事前に見通しを持っておくことも、飼い主さんにできる備えのひとつです。
1. 診断だけでも複数の検査が重なる
血液検査、超音波検査、体液検査、外部委託の遺伝子検査などを組み合わせると、診断段階で数万円規模になることが一般的です。緊急対応が必要な場合はさらに加算されます。
2. ペット保険の適用範囲を確認しておく
ペット保険はプランによって補償割合や免責、通院・入院・手術の扱いが大きく異なります。加入前から存在した症状は補償対象外となるのが通例のため、検討するなら健康なうちに、そして約款の除外事項を確認したうえでという点が重要です。
3. 「もしも」の予算枠を意識しておく
保険とは別に、猫1頭あたり年間で一定額を医療用の予備費として確保しておく考え方もあります。金額の正解はありませんが、「いざというときに選択肢を持てる状態」を作っておくことは、飼い主さんの心の余裕にもつながります。
| 備えの方法 | メリット | 注意したい点 |
|---|---|---|
| ペット保険 | 高額時の負担を抑えられる | 既往・除外項目・補償割合の確認が必須 |
| 医療用の貯蓄枠 | 使途の制約がない | 短期間で大きな支出が必要な場合は不足も |
| かかりつけ医との関係構築 | 相談・紹介がスムーズ | 定期受診の習慣が前提 |
| 二次診療施設の把握 | 専門的検査に早くつなげる | 紹介状が必要な場合が多い |
よくある質問
- 猫コロナウイルスの抗体が陽性でした。うちの子はFIPになりますか?
- 抗体陽性は「ウイルスに接触した履歴がある」ことを示すのみで、FIPの発症を意味しません。多頭飼育環境で育った猫では陽性率が高く、その多くは生涯FIPを発症せずに過ごします。数値だけで判断せず、体重・食欲・活動量といった日常の状態を継続して観察することが大切です。
- FIPは人や犬にうつりますか?
- 猫コロナウイルスは猫特有のウイルスで、人や犬に感染するものではありません。人の新型コロナウイルスとも別種です。同じ家に暮らしていても、飼い主さんが感染する心配はないとされています。
- 同居猫がFIPと診断されました。他の子を隔離すべきですか?
- 変異後のウイルスが猫から猫へ直接伝播することは基本的にないと考えられているため、隔離が必須というわけではありません。ただし、同居猫が変異前の猫コロナウイルスをすでに共有している可能性は高いので、トイレの清掃頻度を上げ、同居猫の体調変化を注意深く見守りましょう。具体的な対応はかかりつけの獣医師に確認してください。
- FIPを防ぐワクチンはありますか?
- 日本では一般的に流通しておらず、海外で使われているものについても有用性の評価が定まっていません。現時点でワクチンによる確実な回避は期待できないため、環境の清潔さを保つことやストレスを減らすことなど、日常のコンディション管理が現実的な取り組みになります。
- 何歳ごろに気をつければよいですか?
- 発症は生後6か月〜2歳ごろに集中する傾向があります。ただし高齢猫や免疫が低下している猫でも起こりうるため、年齢に関わらず「いつもと違う」に気づける観察習慣を持つことが基本です。月1回の体重測定を続けると、緩やかな変化を捉えやすくなります。
- 多頭飼いをやめた方がよいのでしょうか?
- 多頭飼育はリスク要因のひとつですが、それだけを理由に飼育をやめる必要はありません。トイレ数の確保、こまめな清掃、換気、縦方向の空間づくり、猫同士の関係性への配慮といった環境整備で、ウイルス量やストレスを下げていく方が現実的です。頭数を増やす際は隔離期間と健康診断を挟むことをおすすめします。
- どのタイミングで病院に相談すればよいですか?
- 39.5度前後の発熱が数日続く、痩せているのにお腹だけ膨らむ、呼吸が浅く速い、ふらつきやけいれんがある、といった場合は早めの受診をおすすめします。特に呼吸の異常は緊急性が高いため、その日のうちに動物病院へ連絡してください。判断に迷うときも、電話で相談してみるだけで安心材料になります。
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まとめ|FIPを正しく知って、落ち着いて備える
FIPは確かに厳しい病気ですが、「猫コロナウイルスを持っている=発症する」という関係ではなく、多くの猫は生涯を通じて発症せずに過ごします。過度に恐れるのではなく、リスクが上がる条件と初期サインを知っておくことが、いざというときの落ち着いた行動につながります。
日々できることは決して特別ではありません。トイレを清潔に保ち、ストレスを減らし、月1回の体重測定と年1〜2回の健康診断を続ける。この積み重ねが、変化への気づきやすさをつくります。
この記事のまとめ
・FIPは猫コロナウイルスが体内で変異して起こる状態で、ウイルス保有=発症ではない
・発症は生後6か月〜2歳に集中し、多頭飼育・環境変化・免疫低下がリスク要因になりうる
・病型はウェット・ドライ・神経/眼型に分かれ、症状の出方が大きく異なる
・単独で確定できる検査はなく、複数の検査を組み合わせた総合判断が行われる
・抗体陽性=FIPではなく、人や犬に感染することもない
・トイレ清掃・ストレス軽減・定期健診・体重記録が日常でできる基本の備え
・気になるサインがあれば自己判断せず、早めにかかりつけの獣医師へ相談する
ねこまめ編集部では、猫と暮らす日々のなかで役立つ健康情報を、できるだけ正確に、そして飼い主さんが行動に移しやすい形でお届けしていきます。愛猫の様子で気になることがあれば、まずは動物病院に相談することから始めてみてください。



