猫の下痢の原因2026年版|色・状態・頻度で判断する危険サインと自宅ケアの正しいやり方

朝、トイレを確認したら猫の便がゆるかった――そんな経験は、猫と暮らしていれば一度は通る道です。ただ、猫の下痢は「一晩様子を見れば戻るもの」から「今すぐ動物病院へ行くべきもの」まで幅が広く、見分けがつかないまま不安な時間を過ごしてしまう飼い主さんは少なくありません。
この記事では、便の色・状態・回数という3つの観察軸から緊急度を整理し、原因として多いものを分類したうえで、自宅でできる正しいケアと避けたいNG対応をまとめました。多頭飼いで「誰の便か分からない」ときの特定方法や、動物病院へ持参する情報の整え方も解説します。愛猫のいつもと違うサインを、落ち着いて読み解くための地図として使ってください。
まず確認したい猫の下痢の3つの観察軸
猫の下痢を判断するとき、多くの飼い主さんは「ゆるいかどうか」だけを見てしまいがちです。しかし動物病院で獣医師が最初に聞くのは、色・状態(硬さや混入物)・頻度の3点です。この3軸を押さえておくと、受診の必要性がぐっと判断しやすくなります。
1. 色:どこで起きているかのヒントになる
便の色は、消化管のどのあたりで異常が起きているかを推測する材料になります。黒っぽいタール状の便は上部消化管(胃・小腸)からの出血が疑われ、鮮やかな赤い血が混じる場合は大腸や肛門付近が関係していることが多いとされます。
ただし、色は食べたものの影響も強く受けます。レバー系のフードやおやつを食べた後は便が濃くなりますし、赤い着色料入りのフードで一時的に赤みが出ることもあります。直前48時間に何を食べたかとセットで記録しておくと、判断の精度が上がります。
2. 状態:泥状か水様か、混入物はあるか
下痢と一口に言っても、形が崩れた「軟便」、泥のような「泥状便」、液体に近い「水様便」では意味合いが変わります。水様便は脱水のリスクが高まりますし、粘液(ゼリー状のもの)が多く混じる場合は大腸の炎症が示唆されます。
混入物のチェックも重要です。白い糸くずのようなものが動いていれば寄生虫の可能性がありますし、未消化のフードがそのまま出ている場合は消化吸収がうまくいっていないサインかもしれません。
3. 頻度:1日何回か、何日続いているか
健康な成猫の排便回数は1日1〜2回程度が一般的です。これが1日4回以上に増えている、あるいは3日以上続いている場合は、単なる一過性のお腹の緩みとは考えにくくなります。
また、頻繁にトイレに入るのに少量しか出ない「しぶり(テネスムス)」も見逃せません。大腸性下痢や、猫では便秘との鑑別が必要になるケースもあります。
| 観察軸 | 様子を見てよい範囲 | 受診を検討 | すぐ受診 |
|---|---|---|---|
| 色 | 茶色〜こげ茶 | やや黒い/薄い黄土色 | タール状の黒/鮮血が多い/白っぽい |
| 状態 | 形が崩れた軟便 | 泥状便が2日以上 | 水様便/大量の粘液/虫が見える |
| 頻度 | 1日2〜3回で1日以内 | 1日3〜4回が2日以上 | 1日5回以上/3日以上継続 |
| 元気・食欲 | いつも通り | やや食欲低下 | 食べない/ぐったり/嘔吐を伴う |
編集部の一言
迷ったときは、スマホで便の写真を撮っておくのが最も確実です。時間経過で色や質感は変わってしまうため、実物を持参できない場合でも写真があれば獣医師の判断材料になります。トイレ砂に埋まっている場合は、掘り出して自然光の下で撮ると色が正確に写ります。
便の色で読み解く5つのパターン
色は最も直感的に異常に気づける指標です。ここでは代表的な5パターンを整理します。なお、色だけで病名を断定することはできません。あくまで「どの程度急ぐべきか」の目安として使ってください。
1. 茶色〜こげ茶:正常範囲
健康な猫の便は、こげ茶色に近い茶色です。フードの種類によって濃淡は変わり、穀物中心のフードよりも動物性たんぱく質の比率が高いフードのほうが色が濃くなる傾向があります。形が少し崩れている程度なら、環境の変化やフードの切り替えによる一時的なものかもしれません。
2. 黒色・タール状:上部消化管の出血の可能性
コールタールのように黒くベタつく便は「メレナ」と呼ばれ、胃や小腸で出血した血液が消化された結果である可能性があります。胃潰瘍、異物による損傷、腫瘍などが背景にあることもあり、様子見は推奨されません。すぐに動物病院へ相談してください。
ただし、鉄分を多く含むフードやサプリメント、レバーなどを与えた直後は便が黒っぽくなることがあります。食事内容も併せて獣医師に伝えましょう。
3. 赤色・鮮血混じり:大腸や肛門付近の出血
便の表面に鮮やかな赤い血が付着している、あるいは筋状に混じっている場合は、大腸炎、肛門嚢の炎症、直腸のポリープなどが考えられます。少量で1回きりなら緊急性は低いこともありますが、繰り返す・量が多い場合は受診が必要です。
4. 白っぽい・灰色:脂肪の消化不良や胆汁の問題
便が白っぽくパサついている、あるいは油っぽくテカっている場合、脂肪がうまく消化吸収されていない可能性があります。膵臓や肝臓、胆道系が関わることもあり、慢性的に続く場合は精密な検査が必要になります。
5. 黄色・オレンジ:腸の通過が速すぎるサイン
鮮やかな黄色やオレンジ色の便は、腸内を便が通過するスピードが速く、胆汁が十分に変化しないまま排出された状態であることが多いです。急性の腸炎やフードの急な切り替え時によく見られます。
| 便の色 | 推測される部位 | 主に考えられる背景 | 緊急度 |
|---|---|---|---|
| こげ茶〜茶色 | — | 正常範囲 | 低 |
| 黄色・オレンジ | 小腸〜大腸 | 通過速度の亢進・急性腸炎 | 中 |
| 白っぽい・灰色 | 膵臓・胆道 | 脂肪消化不良 | 中〜高 |
| 鮮血混じり | 大腸・肛門 | 大腸炎・肛門嚢炎 | 中〜高 |
| 黒・タール状 | 胃・小腸 | 上部消化管出血 | 高 |
注意
黒色便・大量の鮮血・白色便のいずれかを確認した場合、または下痢に加えて嘔吐が繰り返されている場合は、時間帯を問わず動物病院に連絡してください。特に子猫やシニア猫は脱水の進行が速く、半日で状態が大きく変わることがあります。
猫の下痢を引き起こす6つの主な原因
下痢の背景は多岐にわたりますが、大きく6つに分類すると整理しやすくなります。それぞれで対処の方向性が変わるため、心当たりを絞り込んでいきましょう。
1. 食事由来:切り替え・食べ過ぎ・不適切な食材
最も多い原因の一つが食事です。フードを1日で全量切り替えた、いつもより多く与えた、人間の食べ物を与えた――こうしたケースでは、腸内環境が急な変化についていけず下痢につながります。
特に猫は乳糖を分解する酵素が少ないため、牛乳を与えると下痢を起こしやすいことが知られています。「猫にミルク」というイメージは根強いですが、与えるなら猫用ミルクを選んでください。
2. ストレス・環境変化
猫は環境の変化に敏感な動物です。引っ越し、模様替え、来客、新しい猫の導入、工事の騒音などがきっかけで一時的な下痢を起こすことがあります。多頭飼いの場合、猫同士の関係変化がストレス源になっているケースも珍しくありません。
3. 寄生虫:回虫・条虫・ジアルジア・コクシジウム
保護猫や外に出る猫、子猫では寄生虫が原因のことがあります。回虫や条虫は肉眼で確認できる場合がありますが、ジアルジアやコクシジウムなどの原虫は顕微鏡検査でないと分かりません。粘液の多い下痢が続く場合は、便検査を受けることをおすすめします。
4. 感染症:ウイルス・細菌
猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)は激しい下痢と嘔吐を伴い、子猫では命に関わることがあります。ワクチン接種歴の確認が重要です。細菌性ではサルモネラやカンピロバクターなどが挙げられます。
5. 異物誤飲
ひも、おもちゃの部品、ビニール、猫草の食べ過ぎなど、消化できないものを飲み込むと腸が刺激されて下痢を起こします。特にひも状異物は腸が引き連れて重篤化しやすく、緊急手術が必要になることもあります。おもちゃの一部が見当たらないなどの心当たりがあれば、すぐに相談してください。
6. 内臓疾患・慢性疾患
甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病、炎症性腸疾患(IBD)、消化器型リンパ腫、膵外分泌不全など、慢性的な下痢の背景に疾患が隠れていることがあります。2週間以上下痢が続く、体重が減っている、毛づやが悪くなっている場合は、慢性疾患の可能性を視野に入れた検査が必要です。
| 原因分類 | 典型的な経過 | 特徴的なサイン | 主な対応の方向性 |
|---|---|---|---|
| 食事由来 | 1〜3日で回復 | 元気・食欲は保たれる | フード見直し・切り替えを緩やかに |
| ストレス | 数日〜1週間 | 環境変化と時期が一致 | 環境調整・隠れ場所の確保 |
| 寄生虫 | 慢性化しやすい | 粘液便・子猫に多い | 便検査・駆虫 |
| 感染症 | 急性で激しい | 発熱・嘔吐を伴う | 早急な受診 |
| 異物誤飲 | 突然発症 | 嘔吐・腹痛・食欲廃絶 | 緊急受診 |
| 内臓疾患 | 2週間以上継続 | 体重減少・毛づや低下 | 血液検査・画像検査 |
年齢・状況別に見る下痢のリスクと対応

同じ下痢でも、猫の年齢や飼育状況によって危険度と優先すべき対応は変わります。ここでは4つのセグメントに分けて整理します。
子猫(生後6か月未満):脱水の進行が最も速い
子猫は体が小さく、体内の水分予備量が限られています。水様便が数回続いただけでも脱水が進み、低血糖を起こすことがあります。「一晩様子を見る」という判断は避け、半日以内の受診を基本と考えてください。
また、子猫は寄生虫や猫パルボウイルスのリスクも高い時期です。ワクチン接種前や保護直後の子猫であればなおさら、早めの便検査が推奨されます。
成猫(1〜7歳):原因の切り分けが中心
健康な成猫であれば、1日程度の軽い軟便は経過観察の余地があります。ただし、食事内容やストレス要因を振り返り、心当たりがない下痢が2日以上続く場合は受診しましょう。
シニア猫(7歳以上):慢性疾患の可能性を視野に
シニア期の慢性的な下痢は、甲状腺機能亢進症や慢性腎臓病、消化器型リンパ腫などのサインであることがあります。体重測定を定期的に行い、下痢と体重減少が並行していないかを確認してください。
多頭飼い:まず「誰の便か」の特定から
多頭飼いで最も困るのが、下痢をしているのがどの子か分からないという状況です。一時的にトイレを個室に分ける、食用色素を微量ずつ別の猫に与えて便の色で識別するといった方法があります(色素法は獣医師に相談のうえ実施してください)。
また、感染性の下痢であれば他の猫にも広がる可能性があります。原因が判明するまでは、トイレの共用を避け、こまめな消毒を心がけましょう。
| セグメント | 様子見の許容時間 | 特に注意すべき点 | 優先する検査 |
|---|---|---|---|
| 子猫(〜6か月) | 半日以内 | 脱水・低血糖・寄生虫 | 便検査・体重測定 |
| 成猫(1〜7歳) | 24〜48時間 | 食事変更・ストレス要因 | 便検査・問診 |
| シニア猫(7歳〜) | 24時間以内 | 体重減少・多飲多尿 | 血液検査・甲状腺 |
| 多頭飼い | 個体特定を優先 | 感染拡大・トイレ共用 | 便検査(全頭) |
補足・参考
脱水の簡易チェックとして、首の後ろの皮膚を軽くつまんで離す「皮膚テント試験」があります。健康な猫なら1秒以内に元に戻りますが、2秒以上戻らない場合は脱水が疑われます。ただし、シニア猫や痩せている猫では皮膚の弾力が元々低いため、判定には注意が必要です。日頃の状態を知っておくと比較しやすくなります。
自宅でできる4つの正しいケア
受診の必要がない軽度の下痢や、動物病院を受診したあとの家庭でのサポートとして、飼い主さんができることを4つにまとめます。
1. 水分補給を最優先にする
下痢では通常より多くの水分が失われます。新鮮な水をいつでも飲める状態にし、器の数を増やす、置き場所を分散させるといった工夫で飲水量を確保しましょう。
水をあまり飲まない猫の場合、ウェットフードを一時的に増やす、ぬるま湯で少しふやかすなどの方法もあります。無理に口へ流し込むのは誤嚥のリスクがあるため避けてください。
2. 消化にやさしい食事に一時的に切り替える
脂肪分が多いフードやおやつは一時的に控え、消化性の高い食事に切り替えます。動物病院で処方される消化器サポート用の療法食は、こうした場面での選択肢になります。
絶食については、犬とは事情が異なります。猫は長時間絶食すると肝リピドーシスのリスクが高まるため、自己判断での長時間の絶食は推奨されません。食欲がある場合は少量ずつ回数を分けて与えるのが基本です。
3. 保温と安静な環境を整える
下痢をしている猫は体力を消耗しています。室温を安定させ、静かで落ち着ける場所を用意しましょう。多頭飼いの場合は、他の猫から離れて休める空間を確保してあげると回復の助けになります。
4. 記録をつける
排便の時刻・回数・色・状態、食事内容、飲水量、体重、元気の程度を記録しておくと、受診時に大きな助けになります。スマホのメモアプリで十分です。写真も日付順に整理しておきましょう。
編集部の一言
実際に観察すると、下痢が続く猫は「水を飲む量が減っている」ことがしばしばあります。体調が悪いと水場まで行くのも億劫になるためです。寝床のすぐそばに小さな水皿を追加するだけで飲水量が回復するケースもあるので、試してみてください。
やってはいけない5つのNG対応
良かれと思ってした行動が、かえって状態を悪化させることがあります。特に避けたい5つを挙げます。
1. 人間用の下痢止めを与える
人間用の医薬品には、猫が代謝できない成分が含まれていることがあります。特にアセトアミノフェンは猫にとって強い毒性を示すことが知られています。獣医師の指示なく人間用の薬を与えることは絶対に避けてください。
2. 犬用の薬やサプリを流用する
犬と猫では肝臓の代謝経路が異なります。犬に安全な成分が猫では危険というケースがあるため、多頭飼育で犬もいる家庭では特に注意が必要です。
3. 牛乳を与える
「お腹をこわしたときは牛乳で栄養補給」という発想は猫には当てはまりません。多くの成猫は乳糖不耐性で、牛乳がかえって下痢を悪化させます。
4. 長時間の絶食をさせる
前述のとおり、猫の長時間絶食は肝リピドーシスのリスクを高めます。特に肥満気味の猫では危険性が上がります。「食べさせないほうが腸が休まる」という考えは、猫には安易に当てはめられません。
5. 症状が軽いからと放置する
元気で食欲もあるからと軟便を何週間も放置していると、慢性疾患の発見が遅れることがあります。2週間以上続く下痢は「慢性下痢」として扱われ、原因の特定に検査が必要になります。
注意
市販のペット用整腸サプリを使う場合も、まずは獣医師に相談してください。下痢の原因が寄生虫や異物である場合、サプリで様子を見ている間に状態が進行することがあります。原因を特定してから補助的に使うのが安全な順序です。
動物病院を受診すべき7つのサイン
「これは受診したほうがいい」と判断できる具体的なサインを7つ挙げます。1つでも当てはまれば、受診を検討してください。
1. 下痢に嘔吐を伴う
下痢と嘔吐が同時に起きている場合、脱水の進行が速くなります。また、異物や感染症、膵炎など緊急性の高い状態が背景にある可能性も高まります。
2. 元気がない・ぐったりしている
いつもの寝場所ではなく物陰に隠れる、呼んでも反応が鈍い、丸まって動かないといった様子は、痛みや強い不調のサインです。
3. 食欲が24時間以上ない
猫が丸一日何も食べない状態は、それ自体がリスクです。下痢と併発している場合は特に急いでください。
4. 便に大量の血が混じる
ティッシュに付く程度の少量ではなく、便全体が赤い、あるいは血の塊が出ている場合は速やかに受診してください。
5. 3日以上続く、または2週間以上断続的に続く
急性でも3日以上続けば検査が必要ですし、断続的でも2週間を超えると慢性下痢として扱われます。
6. 体重が減っている
下痢に伴う体重減少は、栄養の吸収がうまくいっていないサインです。1か月で体重の5%以上減っている場合は、慢性疾患を疑って検査を受けましょう。
7. 子猫・シニア猫・持病がある猫
これらの猫は予備力が低く、状態の悪化が速い傾向があります。「まだ軽いから」と待たず、早めに相談することをおすすめします。
| サイン | 受診の目安 | 持参・伝達すべき情報 |
|---|---|---|
| 嘔吐を併発 | 当日中 | 嘔吐物の写真・回数 |
| ぐったり・隠れる | 即日 | いつから・普段との違い |
| 24時間食べない | 当日中 | 最後に食べた時刻と量 |
| 大量の血便 | 即日 | 便の写真・可能なら実物 |
| 3日以上継続 | 翌日までに | 日ごとの便の記録 |
| 体重減少 | 数日以内 | 体重の推移データ |
| 子猫・シニア | 半日〜1日以内 | ワクチン歴・既往歴 |
受診時に伝えるべき5つの情報

限られた診察時間で的確な判断をしてもらうために、事前に整理しておきたい情報があります。
1. いつから、どのくらいの頻度で
「3日前の夜から、1日4〜5回」というように、開始時期と頻度を具体的に伝えます。曖昧な記憶より、メモの記録のほうが正確です。
2. 便の色・状態・混入物
写真があれば見せましょう。可能であれば、当日出た便をビニール袋に入れて持参すると、便検査がその場でできます。採便から時間が経つと寄生虫の検出率が下がるため、できるだけ新しいものを保冷して持っていくのが理想です。
3. 食事内容と直近の変更点
フードの銘柄、与えている量、おやつ、人間の食べ物を与えたかどうか。フードを切り替えた場合はその時期も伝えます。
4. 環境の変化やストレス要因
引っ越し、来客、新しい家族(人・動物)、模様替え、工事など。猫にとってのストレスは飼い主さんが思う以上に幅広いものです。
5. ワクチン歴・駆虫歴・既往歴
ワクチン接種の時期、駆虫薬の使用歴、過去にかかった病気や飲んでいる薬。他院での診療歴があれば、そちらの記録も持参できると理想的です。
補足・参考
便の採取は、トイレ砂がなるべく付かない状態が理想です。システムトイレなら上のシートの上に出た便を、砂タイプなら表面をすくうように採ります。ラップに包んでからビニール袋に入れ、保冷剤と一緒に持参すると状態が保たれます。常温で長時間放置すると細菌が増殖して検査結果に影響することがあります。
下痢を繰り返さないための4つの環境づくり
回復したあと、同じことを繰り返さないための日常の工夫を4つ紹介します。健康維持をサポートする視点で取り入れてみてください。
1. フードの切り替えは7〜10日かけて
新しいフードに移行するときは、いきなり全量を変えず、少しずつ比率を上げていきます。腸内細菌が新しい組成に慣れる時間を確保することで、消化器への負担を抑えられます。
| 日数 | 従来フード | 新フード | チェックポイント |
|---|---|---|---|
| 1〜3日目 | 75% | 25% | 便の形が保たれているか |
| 4〜6日目 | 50% | 50% | 回数の増加がないか |
| 7〜9日目 | 25% | 75% | 色の変化がないか |
| 10日目〜 | 0% | 100% | 1週間は経過観察 |
2. トイレの数と清潔さを保つ
猫のトイレは「頭数+1個」が目安とされます。トイレが汚れていたり数が足りなかったりすると、我慢によるストレスが生じます。トイレは便の状態を毎日確認できる場所でもあるため、こまめな掃除は健康管理そのものと言えます。
3. 誤飲リスクのあるものを片付ける
ひも、輪ゴム、ビニール袋、ヘアゴム、リボン、小さなおもちゃの部品。猫が興味を示しそうなものは、手の届かない場所に収納しましょう。おもちゃで遊ばせるときは、必ず飼い主さんが見ている状況で。
4. 定期的な健康診断と便検査
年1回(シニアは年2回)の健康診断に、便検査を組み込んでおくと安心です。症状が出る前に寄生虫や腸内環境の変化に気づけることがあります。多頭飼いの場合は全頭まとめて検査すると、感染源の特定がしやすくなります。
編集部の一言
下痢が落ち着いたあとも、2週間ほどは便の記録を続けてみてください。「良くなった」と思っていても、実は形の崩れが残っていることがあります。基準となる「うちの子の普通の便」を写真で持っておくと、次に異常が起きたときの比較材料になります。
よくある質問
- 猫が下痢をしていますが元気で食欲もあります。一晩様子を見ても大丈夫ですか?
- 成猫で元気・食欲があり、便の色に異常(黒色・鮮血・白色)がなく、水様便でなければ、24時間程度の経過観察は選択肢になります。ただし子猫・シニア猫・持病のある猫は脱水の進行が速いため、半日以内の受診をおすすめします。様子を見る場合も、水を飲んでいるか、回数が増えていないかを1日を通してチェックしてください。
- 猫の下痢に人間用の整腸剤を与えてもいいですか?
- 獣医師の指示がない限り避けてください。人間用の製剤には猫が代謝しにくい成分や添加物が含まれていることがあり、状態を悪化させるリスクがあります。市販のペット用整腸サプリについても、下痢の原因が寄生虫や異物である場合は根本的な対応にならないため、まず原因を確認してから使うのが安全な順序です。
- 多頭飼いでどの猫が下痢をしているか分かりません。どうすればいいですか?
- 最も確実なのは、一時的に猫を個室に分けてトイレを個別にする方法です。難しい場合は、トイレの前にカメラを設置する、猫ごとにトイレの場所を分けるといった方法もあります。獣医師に相談のうえ、微量の食用色素を1頭だけに与えて便の色で識別する方法が提案されることもあります。感染性の可能性がある場合は全頭の便検査を受けるのが安心です。
- 下痢のときは絶食させたほうがいいと聞きましたが本当ですか?
- 猫の場合、長時間の絶食は肝リピドーシスのリスクを高めるため推奨されません。特に肥満気味の猫では注意が必要です。食欲があるなら、消化にやさしいものを少量ずつ回数を分けて与えるのが基本です。絶食が必要かどうかは状態によって変わるため、自己判断せず獣医師の指示を仰いでください。
- 便に白い糸のようなものが見えました。これは寄生虫ですか?
- 白い米粒状や糸状のものが動いている場合、条虫や回虫の可能性があります。写真を撮り、可能であれば便と一緒に動物病院へ持参してください。市販の駆虫薬を自己判断で使うのではなく、種類を特定したうえで適切な駆虫を行うことが重要です。多頭飼いの場合、他の猫にも感染が広がっている可能性があるため、全頭の検査を検討してください。
- フードを変えたら下痢になりました。元のフードに戻すべきですか?
- 切り替えが急だったことが原因と考えられる場合は、一度元のフードに戻して便が安定するのを待ち、あらためて7〜10日かけて段階的に移行するのが基本です。ただし、戻しても下痢が続く、あるいは血便や嘔吐を伴う場合は、フード以外の原因が隠れている可能性があります。その際は自己判断せず受診してください。
- 下痢が2週間以上続いています。元気はあるのですが検査は必要ですか?
- 2週間以上続く下痢は慢性下痢として扱われ、寄生虫、炎症性腸疾患、甲状腺機能亢進症、消化器型リンパ腫などの背景を確認する必要があります。元気があっても、体重が徐々に減っていたり毛づやが悪くなっていたりすることがあります。便検査・血液検査・必要に応じて画像検査を受けることをおすすめします。
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まとめ|色・状態・頻度の3軸で落ち着いて判断を
猫の下痢は、原因が食事の切り替えのような軽いものから、異物誤飲や慢性疾患のような緊急性・重要性の高いものまで幅があります。だからこそ、便の色・状態・頻度という3つの軸で観察し、緊急度を段階的に判断することが大切です。
黒色便・大量の血便・白色便、あるいは嘔吐やぐったりを伴う場合は迷わず受診。元気で食欲があり色にも異常がなければ、水分補給と消化にやさしい食事で24時間経過を見る。この線引きを持っておくだけで、不安な夜の判断がずっと楽になります。
そして、記録を残す習慣が何よりの武器になります。写真とメモがあれば、獣医師はより早く原因に近づけます。日々のトイレ掃除を「健康チェックの時間」と捉え直すことが、愛猫の健康維持をサポートする最も確実な一歩です。
この記事のまとめ
・色・状態・頻度の3軸で観察すると緊急度を判断しやすい
・黒色便・大量の血便・白色便は様子見せず即受診
・子猫とシニア猫は脱水の進行が速く、半日以内の受診が目安
・人間用の薬・牛乳・長時間の絶食は避ける
・2週間以上続く下痢は慢性下痢として検査を検討
・フードの切り替えは7〜10日かけて段階的に行う
・便の写真と記録が受診時の最も有効な情報になる
愛猫の「いつもと違う」に最初に気づけるのは、毎日一緒に暮らしている飼い主さんです。トイレの前で少し立ち止まる習慣が、大きな異変を早く見つけるきっかけになります。気になることがあれば、迷わずかかりつけの動物病院に相談してください。



