犬のマラセチア皮膚炎
目次
愛犬が皮膚をかゆがったり、皮膚に赤みを見つけたりすると、マラセチア皮膚炎ではないかと不安になることがあります。犬のマラセチア皮膚炎は、皮膚にもともと存在する常在酵母が関わる皮膚トラブルです。
赤みやフケ状の鱗屑、かゆみなどが主なサインですが、見た目だけで病名を判断することはできません。動物病院で細胞診などの検査を受けて確認する必要があります。
この記事では、受診前に把握しておきたいサインや好発部位、自宅での観察と記録の要点、診断の流れをわかりやすくまとめました。
犬のマラセチア皮膚炎とは?まず知っておきたい3つの基礎
愛犬の皮膚トラブルに向き合うために、まずはマラセチアという菌の性質と、皮膚炎との関係について基本的なポイントを確認しましょう。
マラセチアは皮膚にもともといる酵母
マラセチア属の酵母は、油分を好む好親油性の微生物です。犬をはじめとする多様な動物の皮膚に、普段から存在している皮膚常在菌として知られています。通常時は悪さをしませんが、条件によって皮膚トラブルに関わることがある「日和見皮膚病原体」でもあります。
常在していること自体は異常ではない
皮膚にマラセチアが存在すること自体は、健康な状態でも見られる自然な現象です。単に菌がいるからといって、すぐに皮膚炎と判断されるわけではありません。臨床的な皮膚症状と、検査所見がそろって初めてマラセチア皮膚炎と判断されます。
獣医師による診断が必要な領域
皮膚の赤みやかゆみは、マラセチア以外の原因でも起こります。そのため、飼育者が家庭内で原因を特定することはできません。皮膚の状態を適切に把握し、必要なケア方針を立てるためには、動物病院を受診して専門的な判断を受けることが基本です。
編集部の一言
愛犬の皮膚が赤いと焦ってしまいますが、まずは落ち着いて様子を記録しましょう。自己判断で決めつけず、日頃の様子をメモして獣医師に共有する姿勢が役立ちます。
皮膚に出やすい3つのサインと好発部位

犬のマラセチア皮膚炎において、臨床上で確認されやすい変化にはいくつかの特徴があります。
皮膚にあらわれる3つのサイン
| 主なサイン | 皮膚の見え方 |
|---|---|
| 赤み(紅斑) | 皮膚が部分的に赤く染まる |
| 角化脂漏性の鱗屑(りんせつ) | 皮脂を含むフケ状の付着物 |
| かゆみ | 掻く、舐める、こする仕草(軽微から重度まで様々) |
皮膚が赤くなるだけでなく、表面にフケのような鱗屑が付着することがあります。また、かゆみの強さには個体差があるため、「激しく掻いていないから大丈夫」と判断することはできません。赤みやフケのような変化だけでも注意深く見守る必要があります。
皮膚が重なり擦れ合う「間擦部」に好発
マラセチア皮膚炎の変化は、皮膚同士が重なったり擦れ合ったりしやすい間擦部(かんさつぶ)によく見られる傾向があります。日頃のスキンシップの際にやさしくチェックしておくとよいでしょう。ただし、必ず間擦部だけに出るわけではないため、体全体の皮膚状態を見ることが大切です。
補足・参考
・常在菌・日和見病原体の定義(動物一般の知見):PMC7059102 総説文献(2026年10月12日確認)
・臨床症状および好発部位:WAVD臨床コンセンサスガイドライン(Bondら、2020年発表文献/2026年10月12日確認)
・診断の基本:イリノイ大学獣医学部資料(2026年10月12日確認)
受診前に家庭でできる3つの観察と記録
動物病院を受診する際、家庭での詳細な経過を伝えると診察がスムーズに進みます。次の3つのポイントを意識して記録を残しておきましょう。
部位と見た目を日付入りでメモする
赤みや鱗屑が体のどの部分に出ているかを具体的に書き留めます。スマートフォンなどで患部の写真を撮っておくと、受診時に皮膚の状態を正確に伝えやすくなります。愛犬が触られるのを嫌がる場合は、無理に毛をかき分けることは避け、撮影できる範囲にとどめてください。
かゆがる様子とタイミングを記録する
愛犬が患部を掻く、舐める、床や家具にこすりつけるといった動作をしていないか観察します。「食後に増える」「夜間に集中している」など、一日の中でいつ強く現れるかを記録しておくと有益な情報になります。
始まった時期と生活環境の変化を整理する
症状に気づいた時期や、その前後に生活環境の小さな変化がなかったかを振り返ります。お手入れの頻度やフードの変更など、思い当たる要素を「原因の推測」としてではなく、「日頃の生活情報」としてメモしておきましょう。
編集部の一言
診察室では緊張して普段の様子を忘れがちです。日付入りの写真と簡単なメモを用意しておくと、獣医師に愛犬のコンディションを落ち着いて伝えられます。
動物病院で行う診断の3つの要点
動物病院では、皮膚の見た目だけでなく専門的な検査を組み合わせて診断を進めます。
診断は臨床徴候と細胞診に基づく
マラセチア皮膚炎の診断は、目に見える臨床症状(臨床徴候)の確認と、細胞診(皮膚表面等の細胞検査)を合わせて実施することが基本とされています。
細胞診で皮膚表面の状態を調べる
細胞診とは、皮膚表面等から細胞などを採取して顕微鏡で調べる検査です。
ケア方針は検査結果をもとに獣医師が決定する
診断が確定した後のケアや管理方針は、愛犬の皮膚状態や体質に合わせて獣医師が個別に判断します。動物病院ごとの方針や愛犬の状況によって必要なステップは異なるため、受診先の獣医師の指導に沿って進めることが安心につながります。
自己判断で進めない3つの注意点
皮膚に異常が見られた際、自己判断で対処を進めることは避けましょう。
見た目だけでマラセチアと決めつけない
赤みやかゆみなどのサインがそろっていても自己診断はせず、動物病院で臨床徴候と細胞診による検査を受けてください。外見が似ていても原因が異なることもあります。
診断前にお手入れ用品や人用医薬品を使わない
診断は臨床徴候と細胞診に基づいて行われるため、診断前の段階では何が適切かを家庭で判断することはできません。市販のお手入れ用品や人用の外用薬を使ってよいかは、自己判断せず獣医師に確認してください。
かゆみが強い場合や広がる場合は早めに相談する
愛犬がしきりに皮膚を気にしている場合や、赤みが目立ってきた場合は、様子見を続けずに早めに動物病院へ相談しましょう。気になる症状が続くときも、放置せず専門家のアドバイスを受けることが大切です。
注意
皮膚トラブルの判断やケアには専門的な知見が必要です。自己判断で市販薬などを使用せず、まずはかかりつけの動物病院で診察を受けて指示を仰ぎましょう。
よくある質問
- マラセチアって犬の皮膚にもともといる菌なのですか?
- はい。マラセチア属の酵母は、多くの動物の皮膚に存在する皮膚常在菌です。そのため、菌が存在すること自体がすぐに病気や異常を意味するわけではありません。
- 皮膚に赤みやかゆみがあればマラセチア皮膚炎ですか?
- そうとは限りません。赤みやかゆみは他の皮膚トラブルでも起こる症状です。確定には動物病院での臨床徴候の観察と細胞診検査が必要になります。
- マラセチア皮膚炎はどんな場所に出やすいですか?
- 皮膚が重なり合ったり擦れ合ったりしやすい「間擦部」と呼ばれる部位によく見られる傾向があります。ただし他の部位に現れることもあるため、全身を観察することが大切です。
- 動物病院ではどのような検査を行いますか?
- 獣医師による皮膚の視診などの臨床徴候の確認と、皮膚表面の細胞や菌の状態を調べる細胞診検査を組み合わせて確認するのが一般的です。
- 受診前に家庭で準備しておくことはありますか?
- 症状が出ている部位、フケや赤みの状態、かゆがる時間帯や頻度、気づいた時期などをメモしておきましょう。患部の写真を日付入りで撮影しておくことも役立ちます。
- 自宅でお手入れ用品を使って様子を見ても大丈夫ですか?
- 診断前は何が合うかを家庭で判断できないためおすすめできません。まずは動物病院で診断を受け、どのようなケア用品を使ってよいかも含めて獣医師のアドバイスに従いましょう。
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まとめ|愛犬の皮膚を観察して獣医師と一緒にケアを進めよう
この記事のまとめ
・マラセチアは皮膚の常在酵母であり、皮膚トラブルに関与する日和見病原体でもある
・赤み、角化脂漏性の鱗屑、かゆみが主なサインで、皮膚が重なる間擦部に好発する傾向がある
・診断は臨床徴候と細胞診に基づくため、家庭で観察と記録を行い動物病院で相談する
愛犬の皮膚に赤みやかゆみを見つけると心配になりますが、見た目だけで原因を決めつけることはできません。日頃の様子を丁寧に記録し、かかりつけの獣医師と相談しながら、愛犬のすこやかな肌環境を整えていきましょう。
※動物病院での診断と獣医師の指示を受けた後の、日常のお手入れ用品選びの参考として、犬用シャンプーおすすめ7選|低刺激で皮膚に優しいもご覧いただけます。
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